muchonovさんの提示した「判断力が未熟だから」論法では、年齢による“パターナリズム”を肯定するのは無理があるよという話と、あとリテラシー

muchonovさんのブコメ

[B! 立憲民主党] 立民・本多氏「12歳と21歳だってないとはいえない」 WT寺田座長が意見書 - 産経ニュース

未成年は限定行為能力者で、特にお金や興味目的に成人を性行為に誘うリスクベネフィットを適切に評価できない可能性が高く(詳しくは https://anond.hatelabo.jp/20200123091017 に書いた)だから諸々の自己決定権が制約されてる。

2021/07/26 19:35

が気になった話です。


リンク先の記事https://anond.hatelabo.jp/20200123091017を見ていきます。

未成年に対しては愚行権を含む自由権に一定の制約を課すべきだという社会的コンセンサスがあるからです。未成年に対しては人権を制約するレベルのパターナリズム(保護者的統制主義、当事者の能力やリソースの不足を社会が保護者として補い、庇護する)をとってもよいし、分野・状況によっては積極的にそうしなければいけない

いやもうこれ、『社会的コンセンサスがあるから』なんていう、ふにゃふにゃな理由での“パターナリズム”を肯定してしまっているの、控えめに言っても完全に思考が狂ってますよね。


このへんの彼らの界隈の悪癖について、全くの別件ですけど上手く指摘していたものが増田https://anond.hatelabo.jp/20210729143953にあったので引っ張っておきます。

べんべつ
【弁別】
《名・ス他》見分けること。区別すること。識別。
転じて、常識で見分けられる是非・善悪・道理のわきまえ。

まさにこれがこのアホどもの会話が成り立ちにくい理由の根本なわけよ。


「自分の言ってることは道理であり、常識であり、ことは善悪の問題であり、だから論理的なチェックを受けたり反論をされたりするのは不当でありプンプンプン!」
ってお気持ちなんだよね。


なんでバキのレイプがダメでBLのレイプがセーフなのか、フェミニストさんの言ってることなんかおかしくないか、
そこを問うたり理屈のチェックしたりすること自体常識がない、わきまえがない、普通に考えればわかるでしょ。
と。


このバカ保守ジジババみたいな台詞がサヨクidから飛び出てくるのが現代なわけ。
「常識で見分けられる是非・善悪・道理のわきまえ」だぜ?すごすぎでしょ。

やばいですね☆



パターナリズム”(父権主義・家父長制)にせよ、「お母さん保守」にせよ、各々がそういった思想を持つこと自体は、まぁ愚昧ではあるとしても、勝手です。問題は、真っ当な理屈がないにも関わらず、それがさも普遍で不変の常識(≒“社会的コンセンサス”)であるかの様に鎮座する事であって、まさにその問題点そのものを“パターナリズム”の正しさの理由として掲げているあたり、おもいっきり思考が捻転していると言わざるを得ません。




そもそも『「判断力」によって峻別すべき』だと仰るならば、「ペーパーテストして免許制にでもすれば?」でほぼほぼ終了する話なわけです。*1
『「判断力」によって峻別すべき』ならば、その「判断力」をテストする、というのはどう見ても最も正道な手段なのですから。“パターナリズム”などという手段を用いる必要は全くありません。






いやそれだけじゃない、ちゃんと「数字」を出して未成年の判断力の無さを提示しているぞ、とmuchonovさんは仰るかもしれません。

ではその箇所を見ていきましょう。

そもそも性行為というのは適切な知識と配慮をもって行わなければ様々な身体的リスクがある行為です。たとえば性感染症。未成年のクラミジア感染率は、少し古いデータですが、15~18 歳健康高校生 6,000 人での陽性率が男5%・女子13%。そして19歳までの未婚妊婦の27.3%が感染しています。http://www.jspid.jp/journal/full/02301/023010063.pdf

そして妊娠。多くの未成年女子が正しい避妊の知識を持っておらず、また力関係的に性行為の場で避妊を求めることができず、その結果として性的交際により妊娠しています。未成年の人工妊娠中絶数は、2014年の厚労省データで約18,000件/年です。https://www.itmedia.co.jp/business/articles/1610/19/news017.html このように未成年で中絶に到る妊娠が突出して多いのは、妊娠リスクに関する未成年の判断力の未熟さの傍証だといえるでしょう。

だから私たちの社会は、子供に性行為を---特に金銭的対価の伴う性行為を---禁じているのです。

なるほど。


しかしまず、クラミジア感染にせよ中絶にせよ、その多くが『成人×未成年*2』による事例なのですか?という話ですし、「いや、そういう事が言いたいんじゃない!あくまで未成年者の判断力の無さの話だ!」などと仰るのかもしれませんが、例えば中絶に関して言えば以下の通りで

f:id:rag_en:20210802171929j:plain

https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/eisei_houkoku/17/dl/gaikyo.pdf

成人の方が圧倒的に多いですよね、と。『中絶=判断力の無さ』という基準を採用するなら、成人の方が判断力が無いという結論になりますよね、と。更に言うと、約1万ウン千件の中絶未成年と言っても、そのうち18・19歳が2014年で6割強、2017年で7割弱、15歳未満なんて約1.5%なわけです。

件数で言えば、未成年のそれはおおよそ40~44歳と同程度です。実施率では未成年の方が多くなりますが、19歳を抜けば(つまり18歳以下)40~44歳とやはり同程度です(2017年)。“未成年で中絶に到る妊娠が突出して多い”とはいったい…?




クラミジア感染も https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/423-chlamydia-std-intro.html 「ヤってそうな層が高い」という身も蓋もない話で、あまり意味のある話にはなりそうにないですよね。
また、未成年妊婦の感染率の高さについては、恐らく成人と未成年とでは妊婦の絶対数に差がある、つまり「分母」の差があるだろうという事を考慮すべきです。実際、こちらの調査http://www.jaog.or.jp/wp/wp-content/uploads/2017/01/chlamydia.pdfでは明らかに未成年妊婦の「分母」が20~30代と比べてかなり小さい事が分かります。



結局、muchonovさんの挙げた「数字」は、(成人と比べて)未成年の「判断力」の無さを示すものにはなり得ず、むしろ成人と未成年がシームレスである事をこそ示すものになっています。






https://b.hatena.ne.jp/entry/4706008212275483490/comment/rag_en 続き。「判断力がー」は、「ペーパーテストして免許制にでもすれば?」でほぼ終了なんよね( https://b.hatena.ne.jp/entry/295482259/comment/rag_en に注意する必要はあるが)。(続メタ - rag_en のブックマーク / はてなブックマーク

あ、「自己決定権が行為のリスクと判断能力に応じて一定程度制約される」こと自体は容認されるんですね。であれば、仰る構想もアリでしょう。年齢での推認に比べて社会実装コストが高すぎて現実的ではないと思うけど

2021/07/27 09:18

ここまでで導き出せる結論は『muchonovさんの提示した「判断力が未熟だから*3」論法では、年齢による“パターナリズム”を肯定するのは無理がある』であって、「自己決定権が行為のリスクと判断能力に応じて一定程度制約される」事自体は肯定も否定も記述されていません。読解力が低すぎます。


もし仮に例えば、muchonovさんが『未成年には精霊の加護がついていて、性行為によって失われてしまう』などと主張されていたとするならば、『ではその精霊を顕現させてみてください』『そもそも加護がなくて何か困るんですか?』等とツッコミを入れていたでしょうし、『成人の粘膜には未成年にとって毒になるものが含まれている、粘膜接触は避けるべきだ』などと主張されていたとすれば、『その毒とやらは科学的な根拠があるのですか?』と伺ったでしょう。

muchonovさんが「判断力が未熟だから」論法で年齢による“パターナリズム”を肯定したから、こちらはその事について指摘した、これはそういう話です。


やはりmuchonovさんは御自身の読解力を何とかされた方が賢明だと思います。/「コストが高い」が、どの程度の意味なのか不明ですが、ペーパーテストして免許証の類を出すだけなんで、そんなに難しい話ではないでしょう。 - rag_en のブックマーク / はてなブックマーク

つまり、性行為を認めるかどうかは年齢で仕切るよりセックスの免許制度化の方がパターナリズムを回避できて好ましいってご主張ですか。rag_enさんらしい伸び伸びとした発想ですね。契約行為や公営賭博も同じですか?

2021/07/28 23:28

好ましいだのなんだのという話はしていませんし、“『「判断力」によって峻別すべき』ならば、その「判断力」をテストする”というのは「rag_enらしい伸び伸びとした発想」*4でもなんでもなく、前述の通り最も正道な手段です。
というか、その発想すらない時点で「判断力が未熟だから」などというのはただのお為ごかしでしかなく、むしろ旧態依然とした“パターナリズム”の維持こそがmuchonovさんの目的なのではないですか?と疑うレベルです。


また、そこで“契約行為や公営賭博も同じですか?”などという質問をされてしまうのも、話を理解できていないと白状している様なもので、これももし仮にmuchonovさんが『「判断力」を基準に、契約行為や公営賭博への「参加資格」を決定するべきだ』と主張されるのであれば、やはりその場合も同様の結論になりますよ、という話でしかありません。



つまり、性行為を認めるかどうかは年齢で仕切るよりセックスの免許制度化の方がパターナリズムを回避できて好ましいってご主張ですか。rag_enさんらしい伸び伸びとした発想ですね。契約行為や公営賭博も同じですか? - muchonov のブックマーク / はてなブックマーク

社会実装コストは、もうそのままの意味ですよ。例えば都の運転免許事業の運営費は55億/年です/年齢による処罰を撤廃して新たにコストをかけてセックス免許制を敷く提案、面白いので、ぜひ広く世間に問うてください

2021/07/28 23:31

muchonovさんは、以前もその「世間に問えばいい」みたいな捨て台詞(?)を吐いてらっしゃいましたけど、つまるところそれは『私は言説を示威行為としてしか見ていません』という自白でしかありません。
そしてこれも以前に指摘したと思いますが、御自身らが言説を示威行為として用いているのだからといって、他者の言説もその様に捉えるのは、対話に齟齬が生まれまくるので、お止めになったほうが賢明です。


それにしてもこの“ぜひ広く世間に問うてください”という物言い、いかにも「社会的コンセンサス」なるもので「正しさ」を決定しようとする事を肯定するmuchonovさんらしいなという感じですが、そもそも“広く世間に問う”の意味がどうも真逆というか、それは例えばありとあらゆるモノが並ぶ大型店舗のような「自由市場」的なイメージであって、むしろ単一の「正しさ」を決定するようなものとは正反対なんですよね。
この辺り、やはり根っこの部分から社会主義志向なんだな、と*5。『学級会ノリで皆の意思を統一しよう』的な。計画経済ならぬ計画思想とでも言えばいいのか。



なお、https://www.npa.go.jp/publications/statistics/koutsuu/menkyo/r02/r02_main.pdfによると、東京都の免許取得者数が20万弱、更新者数が200万強、もしこの約220万人がそれぞれ3000円の手数料を支払ったとすると、めちゃくちゃ大雑把な単純計算ですが66億になりますね(ちなみに全国だと大体その10倍くらいです)。

中絶件数の話でもそうでしたけど、18000件だとか55億だとかの数字を見て舞い上がってしまったのかは存じ上げませんが、そこで一呼吸おいて「成人の件数はどうだろう」「そういやワイらが払っとる手数料はどうなっとるんや」といった様な考えに及ばないのは、さすがに“視野狭窄”が過ぎます。
もちろん、「無限の視野を持て」という話ではありませんし、それは自分も無理ですけれども、いくらなんでもこれは…というお粗末さでしょう。




謎の七面鳥(C95申込中)さんのツイート: "オタクがどんなにキズナアイやセーラームーンが女性や女児に支持されてるアピールしても効かないのは、最早フェミや社会学者というのは敵陣に深く切り込むための仮面でしかなく、本望はキモオタの殲滅だと考えると腑に落ちる。ていうかそれ以外考えられない。"

この視野狭窄がエコーチェンバーの怖さである

2018/10/26 13:52

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*1:もちろん、客観的な事実に基づく事柄でテストすべきであって、いわゆる「性道徳」のようなものが混ざらないように注意する必要はあるが。

*2:順不同

*3:能力的未熟さ云々。

*4:こういう、事実の部分では言い争えないから、言い方によってさも相手の方が異端であるかの様に扱う、こういうのを「ミーム戦」って言うんでしたっけ?知らんけど。

*5:イメージ画像https://cruel.hatenablog.com/entry/2019/03/01/163851